糖質制限と潰瘍性大腸炎

前回は糖質制限をとり入れるにあたり、気をつけるべき人についてお話しました。

やはり個体差をよく把握して適切な食事法をとり入れていく必要があります。

今回はダイエットとは話が少しそれてしまいますが、逆に糖質制限よりの食事をとり入れたほうが良い方についてお話していこうと思います。

糖質制限の食事をとり入れた方が良い方は炎症性腸疾患の方々です。

最近、ニュースでも注目されていますが、炎症性腸疾患の方々は右肩上がりに増えてきているのが現状です。
炎症性腸疾患は主に大きく分けると2つあります。

1.潰瘍性大腸炎

2.クローン病

があります。

1.潰瘍性大腸炎

主に大腸の粘膜に炎症が起こり潰瘍ができます。炎症は直腸から大腸全体に及ぶ場合があり、症状としては下痢、血便、腹痛があります。

2 .クローン病

若年層に発症しやすいといわれています。小腸・大腸など消化管のほぼ全てに潰瘍や凹凸、病変がとびとびにあらわれる炎症性の腸疾患です。

<炎症を助長させる糖>

現時点での医学ではお薬で対処療法的に症状を緩和する薬があっても、なかなか完治に結び付く治療法がないという事から、難病指定されています。

近年では欧米や日本でも1990年以降増加傾向にあり、発症年齢は10代~20代の若年層が多いといわれています。

栄養療法は炎症性腸疾患に有効な結果をだす可能性があります。糖質制限とビタミン・ミネラルなど補給により改善がみられることがあります。

は体の中で炎症を助長する作用があり、歯科の歯周病の分野においても、高血糖の方や糖尿病の方の歯周病のコントロールが悪く炎症を起こしやすいという事があります。ですので、歯周病・歯科領域の治療についても、歯科の局所的な治療だけではなく、全身の血糖のコントロールを同時に行うと治療効果が上がる場合があります。

炎症性腸疾患は現在、発症の原因は明らかにはなっていませんが、1つには自分自身の免疫反応の異常により腸粘膜を攻撃してしまい炎症が起きるとされていますが、未だ全容は明らかにはなっていません。炎症性腸疾患の方にとっては、高血糖に極力しない、血糖を安定させることが重要なアプローチになります。糖質制限を主に摂り入れることによって、症状が寛解に向かう方もいらっしゃいます。

前回もお話したように、厳格な糖質制限はエネルギー不足という問題点もあります。

<糖質制限の注意点>

消化不良による胃腸障害

高タンパク主食によるミネラル不足

体重減少

甲状腺機能低下

疲労感

低血糖症状

メンタル不調

月経周期への影響(女性の場合)

とり入れる場合は、上記注意点によく気をつけながら行う必要があります

活動期の治療中は、上記に留意したうえで糖質を極力減らし、単純糖質である砂糖など、また炭水化物も控えめ、もしくはかなり制限していただくことが望ましいとされています。治療中の症状がひどい場合は糖質を10g以下に推奨される場合もありますが、こちらも個体差がありますので個人のエネルギー状態を把握したうえで専門の先生の指導の下、糖質制限をすることが望ましいです。自己流で糖質制限を厳格にしてしまうと、体調不良を起こす可能性があります。

<良質な脂質でエネルギー補給と炎症を抑える>

また、エネルギー不足を防ぐうえでは良質な脂質を適切に摂り入れていく必要があります。

酸化した油やオメガ6のような炎症を掻き立てやすい油ではなくオメガ3、中鎖脂肪酸(MCTオイル)、オリーブオイルなどをうまく摂り入れてエネルギー不足を防いでいくことが望ましいです。特にオメガ3系のEPA・DHAなどは炎症を抑制する働きがあります。ただし安価なオメガ3サプリメントはかえって酸化していたり、水銀の曝露がある可能性がありますので、安価すぎるものは逆効果になる可能性があります。品質を十分吟味する必要があります。

その他、ビタミン、ミネラル、消化酵素、乳酸菌、ボーンブロススープ、適切な野菜や海藻類・食物繊維を取り入れていく必要があります。

ただし、過去のブログ「全身に現れるSIBOの症状とは?」というところでお話ししましたSIBO(シーボ:小腸内細菌増殖症)という疾患の人には食物繊維がガスの発生源になってしまい、胃腸の不快症状がでてしまう方もいますので、この部分も個体差があります。

そして、単なる糖質制限ではなく、タンパク質をきちんと補う。消化に自信のない方ははアミノ酸、ボーンブロススープをとりいれ、胃腸症状・全身症状をみながら場合によってはプロテインをうまくとり入れていく必要があります。

このように、糖質制限よりの食事(治療中は厳しめな糖質制限)により炎症が落ち着いてくることがあります。

また、アメリカの臨床実験では炎症性腸疾患の方がよく食べていたもののリサーチデータがあります。

  • 揚げ物、フライドポテトなど酸化した油、炎症を起こしやすい植物油脂
  • チーズのような乳製品
  • クッキーのような小麦製品
  • スポーツドリンク、エナジードリンク、砂糖が入ったソーダなど砂糖が入った飲料水は過剰な砂糖の摂取になります。
  • アルコール、ジャンクフード・・・

炎症性腸疾患の方(炎症性腸疾患ではない方でも)は、上記のような食事の過剰摂取には気をつけたほうが良いと思います。

<粘膜修復には亜鉛>

最近では、粘膜の修復において、亜鉛が非常に有効という論文結果も出ております。

亜鉛は常日頃、セミナー受講生の方にも亜鉛の重要性をお話していまが、亜鉛は老若男女問わず、意識して取ってほしいミネラルの一つです。

亜鉛の重要性については過去のブログをご覧ください

亜鉛はDNA合成のために重要なミネラルです。

亜鉛が不足してくると細胞の修復能力が劣ってきます。そのため、傷の治りが悪い、炎症性腸疾患の方の腸粘膜修復にも当然時間がかかってしまいます

研究結果などでは、潰瘍性大腸炎・クローン病、両病態において亜鉛不足(66μg/dL以下を亜鉛不足という事にしています)の方が多かったという結果もあります。

亜鉛欠乏の診断基準は60~80μg/dL未満の方を診断結果潜在性亜鉛欠乏としています。

実際、クリニックで診察していましても(多くの方に血清亜鉛を測っていただいていますが)サプリメントを摂らない限り現代人は潜在性亜鉛欠乏の状態にあり大体の方が80μg/dL未満の方が多いという印象です。

ですので、このような炎症性腸疾患の方は機会があれば一度、血清亜鉛を測って頂きたいですし、測る機会がなくても傷のなおりが遅い、亜鉛不足にまつわるメンタル不調がある方は亜鉛をしっかり補うことが望ましいと思います。

食事では亜鉛=かきのイメージがりますが・・・・

1回で食べる量に換算すると、牡蠣においては5個(牡蠣;約60gで亜鉛摂取量が7.9mg)になります。

大体、大人1人10㎎ぐらいの亜鉛摂取推奨量ですので、牡蠣を5つ食べたとしても、亜鉛の1日摂取量には満たされません。

そして、これは、健康を維持するレベルの亜鉛摂取量であり、何かしらの疾患を治療するという場合においては、場合によっては30㎎/日または、それ以上ということがあるかと思います。

また、亜鉛の消化・吸収には胃酸分泌能力が関係してきます。

胃酸が不足しているという人は、亜鉛の吸収率が下がってします。

ぜひ一度血清亜鉛でモニタリングし、自分の血清亜鉛の数値を把握することが望ましいです。(通常保険適応外)

まとめ

炎症性の腸疾患の方には糖質制限が向いている。

その他、癌、難治性のてんかんの方にも向いている。(個体差あり)

・糖質制限を取り入れるのであれば、デメリットにならないように、消化・エネルギー不足に気をつけて糖質制限食を続けていく必要がある。

・ビタミン・ミネラル・良質の脂質など積極的に摂り入れていただき、定期的な血液検査でご自身の状態をモニタリングしていただきたいと思います。

この治療においては専門医の診断やアドバイスが必要になると思いますので、ご自身で自己流にするのではなく、専門家に相談/指導を受けながら、食事療法を続けていただきたいと思います。

次回はまた、ダイエットにもどりまして、ダイエットについてお話していきたいと思います。

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