少し前の話ですが、週末子供達と「さとらんど」に行ってきました。北海道らしいかなり広々とした公園でバーベキューや自電車に乗ったり親子連れは楽しむことができる公園です。このさとらんどの中の公園に「ミルク工場」というものがあり、牛乳などの工場見学やその商品ができるまでわかりやすく解説されていました。
そこでついつい分子栄養学にまつわるような事が書いてあると、子供より興味津々になってしまいますが、酪農家さんの間では常識・当たり前かもしれませんが、案外牛の食べているエサについて知らないことが多く大変興味深かったです。
その1 サイレージ
牛の食べている草は、単なる冬の間用に草を干して倉庫に貯蔵してるだけかと思いきや、ここには乳酸菌と乳酸発酵の知恵が詰め込まれていたのです。
まず驚いたのがこの表記「草の漬物」
「草の漬物」って何?
じつはこのサイレージは牧草などをサイロ(家畜飼料を貯蔵する倉庫のこと)で発酵させたもので、乳酸発酵を利用する事で飼料の長期保存を可能にしているとのことです。発酵は牧草に自然に付着している乳酸菌によって行われています。乳酸菌による乳酸発酵のおかげで酢酸を生成することで有機酸の比率が上がりphが下がります。酸性が苦手なカビや細菌類の活動を抑制することができます。ここでもカビとの戦いなんですね。人間の腸も悪玉菌やカンジダのようなカビをいかに繁殖させないようにすることが栄養療法においてとても大事ですが、酪農の現場でもこのサイレージは酪農家さんの腕の見せ所のようで、サイレージ用乳酸菌とかも売ってるようです。多くの乳酸菌が嫌気性下で(酸素が必要ない)活発に発酵するため、同時に好気性(酸素が必要)の活動も抑制できます。
発酵時の乳酸菌量が多過ぎても家畜に影響がでてしまうようで、家畜に無影響かつ長期保存の乳酸菌量が研究されているそうです。
また乳酸菌を利用することは長期保存だけでなく肉の質向上というメリットもあるそうです。牛は豊富な有機酸が含まれたエサを好み肉質がよくなるそうです。
その2 美味しい草のいろいろ
牛の主食は繊維という人間の栄養にはなりずらい成分を多く含んだ牧草です。牛は牧草を食べ第一胃内の微生物の働きで繊維分を発酵・分解し必要な栄養分を消化吸収します(下記写真参照)。またこの微生物からも栄養を吸収しています。実はこの牧草にも種類があります。
イネ科 牛に大切な繊維分を多く含んだ牧草です。
マメ科 タンパク質やカルシウムなどのミネラルを多く含んだ牧草です。
デットコーン 飼料用トウモロコシの実や葉を細かく切ったものです。
これらをさきほどのサイレージという「つけもの」にします。繊維分だけかと思いきやちゃんとタンパク質やミネラルの含んだ牧草も食べてるんですね。
その3 牛の胃袋
子牛は第一の胃の発達が未熟で大きさは成牛に比べて小さいです。微生物の発酵にとって重要なのは第一の胃です。微生物の発酵によって揮発性脂肪酸ほとんどが第一の胃壁から吸収されます。微生物の分裂増殖を繰り返し、次第に第一胃絨毛が発達するとともに、微生物の種類・濃度が飛躍的に増加することで「第一胃微生物の確立」と「第一胃組織の発達」が起こり真の反芻動物となるのです。
上記に挙げた牧草やサイレージは粗飼料と言われるものですが、近年では牛の生育を早め大きく短時間での肥育・産乳・産卵を可能にするために濃厚飼料(特にタンパク質が多い飼料)も多く使われています。トウモロコシや大麦・小麦・米・豆類など。
人間にとっても高タンパク食はメリットもありますが、消化機能を無視した高たんぱく食・糖質制限食などのMEC食(肉・卵・チーズ)によりかえって体調を崩している方は多く見かけますが、家畜も同様に濃厚飼料の高たんぱくの飼料の割合が多すぎるとかえって有害になり、人間も食物繊維の摂取が健康を維持するように、家畜も粗飼料(牧草・サイレージ)も同時に与える必要があり、その配分が畜産者の技術なのです。
第一の胃が未発達の子牛にとっては特に過度な濃厚飼料は胃内の細菌叢の乱れを起こし、ビタミンB1(チアミン)不足をチアミン欠乏症(大脳皮質壊死症)痙攣・起立不能・弓なり緊張などの神経症状を引き起こします。
家畜も人間の健康も乳酸菌や乳酸発酵。また食物繊維や高たんぱく食などのバランスが重要なんですね。
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