ダイエット後のリバウンドのメカニズム
今日はダイエット後におきる、リバウンドのメカニズムについてお話していきます。
皆さん、なかなか痩せにくい、太りやすいとお困りの方が多いと思いますが、前回までお話してきた糖質制限や、ファスティングなど色々な食事療法を試した方も多いかと思います。
上記のダイエットにおいて体重減少や体脂肪率の低下というのは目に見えて(特に女性においては)とても嬉しい結果であるがために、そのダイエットの食事法を安易に繰り返してしまう方も多いかと思います。しかし実は、繰り返し行うことで、その背景では基礎代謝の低下をもたらし、さらなる痩せにくい身体を作り出している可能性があるかもしれないという事を今日はお話していきます。
①基礎代謝と甲状腺機能
まず、身体の基礎代謝をつかさどっているのは、甲状腺ホルモンです。
甲状腺ホルモンは喉のところにある、蝶々型をした臓器になりますが、そこで全身の代謝にまつわるホルモンを分泌しています。
甲状腺ホルモンは心臓を動かしたり、熱を作り出したり、汗をかいたり、脂肪を分解したり、様々な代謝に関係しているわけです。
そのため、甲状腺機能が低下してくると、基礎代謝が低下し、
・心臓が徐脈になる(貧血がある場合は頻脈でマスクされることもある)
・汗をかきにくい
・全身の血流が悪く冷え
・抜け毛
・疲労感
・脂肪の分解が進まないためコレステロール値の上昇
・中性脂肪の上昇
・痩せない
・太りやすい
・むくみ
など
という現象が起きていくわけです。
病気という概念でいうと、甲状腺機能低下の一般的な病気は橋本病という自己免疫疾患になります。
これは、自己免疫疾患の一つになりますので、確定診断としては血液検査で自己免疫抗体が高値になってくることにより、診断されます。
橋本病と診断されても、軽症で症状が重くない方は経過観察をされている方もいますし、症状が強く疲労感などがある場合は、甲状腺ホルモンの薬を処方される場合があるかと思います。
実は、ダイエットを行う上で、そしてダイエットにおいてのリバウンドで必ず考えなければいけないのは、甲状腺機能なのです。
前回は、糖質制限からの副腎疲労のお話をしてきましたが、甲状腺機能もまた、ダイエットにおいて重要な役割をしている器官です。副腎疲労があると、甲状腺機能も同時に低下している場合が多いのです。
食事を食べないこと(欠食・ファスティング)を取り入れ、短期間での減量や体脂肪減少の成功体験により、定期的に繰り返し、食べない方向性のダイエットを繰り返す方が多いのですが、そうすると、非常に身体はエネルギー不足になり、今までと同じような代謝でエネルギーを使っていると非常に体にとって飢餓のリスクがあると判断し、基礎代謝を低下させるという防御反応が働いていきます。
甲状腺機能は血液検査では
TSH(甲状腺刺激ホルモン)
FT3(甲状腺ホルモン)
FT4(甲状腺ホルモン)
この3つを主に測ることで、大まかな甲状腺機能を測ることが出来ます。
しかし、なかなかダイエットをしている人が甲状腺機能を病院で測ってもらいながら、ダイエットを続けることは現実問題として難しいことかと思います。
そして、何かしらの体調不良が出たときに、初めて病院で採血をし、甲状腺機能低下の診断を受けたり、診断は異常なしでも甲状腺機能低下にまつわる不調や症状で悩む方もいるかと思います。保険診療における甲状腺機能の血液検査基準値は広く、多くの方が血液検査では異常なし。と診断されてしまうことが多いのです。
甲状腺機能が繰り返しの食べないダイエットや厳格な糖質制限によって、甲状腺機能が低下してくると、当然全身の代謝が落ちてきますので、食べないようなダイエット療法をしている間は減量するかもしれませんが、もとの食事状態に戻すと、かえって今までよりもちょっと食べただけで太りやすくなるという現象が起きてきます。
その結果、「私は食べたら太るんだ」という判断のもとに、また安易なファスティングをとりいれてしまうという事になります。
ところが、そのようなことを行うことで、エネルギー不足と感じ、身体は防御反応が働き、さらに基礎代謝を低下させることにつながります。
②中枢性機能低下とその他のホルモン
また、この甲状腺ホルモンの中枢は脳の視床下部、脳下垂体です。脳の下垂体はその他のホルモンの分泌の関与し、指令をだします。長期のエネルギー不足という事は、甲状腺ホルモンの問題のみならず、それを司る脳下垂体の中枢性機能低下につながります。
この、脳下垂体には甲状腺刺激ホルモンだけではなく、
・性腺刺激ホルモン
・プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)
・副腎皮質刺激ホルモン
・成長ホルモン
脳下垂体後葉には
・オキシトシン(子宮収縮ホルモン)
・抗利尿ホルモンという尿を再吸収するホルモン
の指令が出されています。
つまり、長期のエネルギー不足は、脳下垂体の甲状腺ホルモンの分泌低下の問題のみならずその他のホルモンにも影響を及ぼす場合があります。そのため、極端なダイエットをした場合は、女性では、月経不順、不妊の要因を作っている場合もあります。
③プロラクチンと不妊
不妊でお困りの方の中には、高プロラクチン血症という病名がついている方もいると思いますが、同じ脳下垂体から分泌される乳汁分泌ホルモン(プロラクチンホルモン)も甲状腺ホルモンの働きが悪くなることによって、フィードバックがかかり、脳下垂体が異常に刺激をされ、結果としてプロラクチンホルモンが授乳中ではないのに、妊娠していない女性において、高くなるという現象です。このプロラクチンが高くなるという事は、出産した後の状態、すなわち(今は妊娠しなくても良いという)排卵抑制がかかるという事になります。
そのため、脳下垂体機能低下の問題が出てくると、若い女性であれば不妊という事に、つながってきます。
④抗利尿ホルモンとトイレが近い
またよくある症状として、脳下垂体後葉には抗利尿ホルモンがありますが、尿を濃縮して尿を再吸収を促すホルモンです。ところが中枢性の問題が出てくると、尿の再吸収が上手くいかず、隠れ甲状腺機能低下の方は頻尿の症状(尿が近い、尿意を我慢できない)があらわれてくる場合があります。実は脳(特に脳の下垂体)の機能にトラブルが生じている証になります。
⑤まとめ
繰り返しの食べないファスティングや厳格な糖質制限による過度なエネルギー制限はかえって基礎代謝低下をもたらし、しいては脳下垂体の状態にまで影響を及ぼし、意図しないところでの未来の不調を作り出しているといっても過言ではありません。
そのため、欠食やカロリー制限をする場合は必ず、甲状腺機能をモニタリングしながら、また、甲状腺機能低下にまつわる症状が出ていないかしっかり見極めながら実行する必要があります。(基本的に私はこの類の食事療法はデメリットも伴うため、自己流や安易な実行はお勧めしていません。)
これは、自己判断では診断するのは非常に難しいという事になりますし、一時的な体重減少や体脂肪率減少を優先して根本的な健康概念が抜け落ちているということが特に若い女性にみられるかと思います。
むくみ(特に顔や手足・二の腕など)があると、太っていると感じているかもしれませんが、実は基礎代謝の低下からくる浮腫みかもしれません。
そのため、むくんでいる人は勝手に水分を制限したり、ホットヨガや岩盤浴で汗を大量にかいて、むくみを調整しようとする方もいますが、それは脱水を招き、ミネラル不足、不調の原因につながっていくことになります。
根本的には甲状腺機能を上げ、そして基礎代謝をあげてエネルギーを消費していく体に体質の改善をしていく必要があるかと思います。
次回は、このダイエットにおける、甲状腺機能のアップの仕方についてお話をしていきたいと思います。
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