ドライマウス(口腔乾燥症)

ドライマウス(口腔乾燥症)の原因や栄養との関係についてまとめてみました。

「口が乾く」「唾液が少ない」など口腔の乾燥感を訴える方は潜在的な方も含めたら実はかなり多くいるのではないかと思います。しかしその一方でどこの病院にかかったらいいか分からないという声も多く聞きます。皆さん行き先がなく歯科やまた大学の口腔外科にかかるということが多いかもしれません。

以前私が大学病院の口腔外科にいた時も実際に口腔内の乾燥感を訴える方はかなり多くいらっしゃいました。実際シェーグレン症候群という病名がつく方も中にはいましたが、やはり診断基準を満たさずに原因不明とされる方も多かったです。

今日は分子栄養学的な観点からドライマウス(口腔乾燥症)へのアプローチを書いてみたいと思います。

全身疾患がある場合はまず基礎的な疾患の治療が最優先ですが、一般の内科でどこも問題ないとされてしまった場合にはやはり栄養療法は有効なのではないかとおもいます。まず口腔乾燥症状を訴える人には以下の項目にどれくらい当てはまるかチェックしてみてください。

①水分は十分に摂取しているか

②その水分はカフェイン飲料ではないか

③タンパク質を毎食とっているか

④身体的・精神的ストレスはないか

⑤貧血症状はあるか→貧血症状は立ちくらみだけではなく多彩な症状があります。詳しくはこちらをお読みください

⑥甘いものをよく食べるか→低血糖症状はないか

⑦とにかく疲れている

⑧精神科の薬や複数の薬を飲んでいないか

脱水状態の確認

①②に関しては何気ない毎日の生活習慣の中で起こる脱水状態をみています。ドライマウスの原因として脱水は十分に考えなくてはいけないことの一つだと思います。元々の水分摂取量がすくなっかたり、汗で失われていたり、また水分をとってるつもりでも利尿作用のあるカフェイン飲料をガブガブのんでしまっているということもあるかもしれません。

 

タンパク質の摂取量

タンパク質の摂取量も重要です。タンパク質をもとにコレステロールを肝臓で合成していますが、実はコレステロールからは胆汁が作られています。その他、悪者扱いされがちなコレステロールですが、性ホルモンやビタミンDなど実は大切なものを作っています。胆汁は脂肪を消化するために必要な液体で、ミセル化(乳化)といって脂肪を水に溶けやすくしてくれる作用があります。コレステロールの合成の7割が肝臓で自前に作られていますが、残りの3割は食事にも依存しています。ですので、あまりにもタンパク質の摂取量が少ない場合はどうしてもコレステロールの合成量が低下し、それて比例して胆汁酸の分泌量も低下してきます。

その結果脂肪の吸収のために必要な乳化ということが十分に行えずに、脂肪の消化吸収が悪くなってしまいます。下記にも述べていますが、唾液の分泌に関わる栄養素の一つにビタミンAがあります。ビタミンAは脂溶性のビタミンですからコレステロール低下や胆汁酸の低下のある方はビタミンAを上手く吸収できずに結果不足するという事態が起きてしまうのです。

 

交感神経の過緊張状態

身体的・精神的ストレスは自律神経のアンバランスを招きます。特に副交感神経よりも交感神経の方が優位になってしまうケースがほとんどです。交感神経が優位になってしまうと胃酸や消化酵素をはじめとした分泌が抑制されてしまうのです。またさきほども書いたカフェイン飲料や薬剤というのは、交感神経を刺激するものです。このようなものの摂取が多い方も知らずに交感神経優位になっている場合があります。自律神経について詳しく知りたい方はこちらのブログもお読みください。

 

貧血の有無

貧血にも色々なタイプの貧血がありますが、どのタイプの貧血であっても口腔の粘膜の状態に影響を与えるものがほとんどです。鉄欠乏性貧血は主に鉄とタンパク質の不足でおこります。鉄・タンパク質・ビタミンCはコラーゲンの生成に不可欠ですから、鉄欠乏性貧血の方は唾液腺の萎縮や口腔内粘膜の萎縮もおこります。大球性貧血は主にビタミンB群(特に葉酸・ビタミンB12)の不足で起きます。ビタミンB群も下記に書きましたが、粘膜や皮膚の状態に深く関与しています。溶血性貧血も主にタンパク質が不足していたり、ストレスが多い場合に起こります。再生不良性貧血はビタミンAの不足が主に関与しています。

 

低血糖症との関係

⑥⑦全ての症状は繋がっていますが、貧血の方は甘いものを欲しくなったり、カフェインを摂りたくなったり、疲れていたり、その結果低血糖症状を起こしてしまいます。以前のブログ「甘いものやカフェインを摂りたい理由」にこの辺のことは詳しく書いていますので是非お読みください。

つまり貧血や甘いもの・カフェイン飲料は低血糖症状を招きその結果交感神経を優位にしてしまいます。また疲れも感じます。慢性的な疲労を訴える人の多くが副腎疲労症候群と呼ばれる人たちです。

 

薬剤の影響

④にも書きましたが、やはり薬の影響というのはかなり口腔乾燥症に関与しています。特に精神科からでる薬で口渇を訴える患者さんは多い傾向にあると思います。また多剤を服用されてる方も薬の相互作用の副作用から口渇がでるケースがあります。薬に関してはかかりつけのお医者さんと相談し、飲む必要がないものに関しては、なるべく服用量を減らしてもらう必要があるかもしれません。

 

下記に項目ごとにまとめてみましたのでご覧ください。

ドライマウスの原因

1.脱水

①糖尿病・腎疾患などの全身疾患

②いろいろな薬や治療の副作用(精神科の薬や多剤の服用は特に起きやすい。)

③口呼吸

④利尿作用のあるカフェイン飲料などの過剰摂取(コーヒー・緑茶・コーラなど)

2.唾液分泌の減少

②中枢・抹消の神経障害

③精神的ストレスによる交感神経の過緊張

④喫煙  など

ドライマウスによって起こりうること

ドライマウス

→①唾液による自浄作用の低下により虫歯・歯周病の悪化→口腔内細菌の乱れ

→②口臭

→③摂食嚥下障害

→④粘膜疾患(舌炎・舌痛症など)

→⑤感染症

→⑥消化器障害

→⑦異常口渇感・乾燥感

ドライマウスの症状から考えられる全身疾患

①シェーグレン症候群

②甲状腺機能低下症

③副腎皮質機能低下症

④糖尿病・腎疾患

ドライマウスにより舌乳頭が委縮した舌 (下記写真)

 

ドライマウスの症状から考えられる特に不足が考えられる栄養素

①鉄

②亜鉛

③ビタミンA

④タンパク質

⑤ビタミンB群(特にビタミンB12・葉酸)

シェーグレン症候群とは

自己免疫疾患と考えられています。原因は不明とされています。中年の女性に最も多くみられます。口の唾液腺や眼の涙腺など、体液を分泌する腺に白血球が侵入し、侵入した白血球が腺を傷つける結果この症候群の特徴的な症状である、口の乾燥・眼の乾燥が発生します。

一次性シェーグレン症候群 他の膠原病の合併が見られないもの

A 腺型 病変が涙腺、唾液腺に限局するもの

B 腺外型 病変が全身諸臓器に及ぶもの

二次性シェーグレン症候群 他の膠原病を合併するもの(関節リウマチ、全身性エリトマトーデス、橋本甲状腺炎、血管炎など)

 

シェーグレン症候群の主な症状

臨床症状は様々ですが、大まかに腺症状と腺外症状とに分けられます。

こんな症状はありませんか?

□口腔乾燥感がある

□食事の時水が必要か

□舌に味覚症状や異常な感覚

□目がゴロゴロしたり、乾燥感

□唾液腺の痛みや腫れ

□胃がもたれる(胃酸の減少により)

□性交性不快感(膣の分泌液の減少)

□鼻が乾く、鼻血

□皮膚の乾燥感

<その他腺外症状>

□関節炎

□精神不安定、集中力低下

□髪の毛ぬける

□疲れやすい

シェーグレン症候群の診断基準

①唾液腺もしくは涙腺の検査(顕微鏡による精密検査)

②唾液分泌能の検査

③涙液分泌能の検査

④自己抗体の検査

このうち2項目以上が陽性(異常)であればシェーグレン症候群と診断することになっています。

1項目のみ陽性であっても、シェーグレン症候群として確定的な診断をするには不十分とされています。

栄養素の不足から考えられるドライマウスの症状

①鉄とタンパク質不足

粘膜や皮膚の材料のコラーゲンは鉄・タンパク質・ビタミンCから構成されています。これらの栄養素が不足すると粘膜や皮膚が脆弱になり皮膚はかさついたり、粘膜は萎縮などの変化が起きてきます。

②ビタミンA不足ここでは口腔症状に関するもののみを記載しています

粘膜の異常角化、粘膜上皮機能の低下

分泌腺の萎縮にともなう粘膜の乾燥

→その結果 気道の易感染性や小腸の吸収能の低下、生殖機能の低下、眼球乾燥症、口腔乾燥症暗順応の低下(とり目)

③亜鉛不足 亜鉛は200以上の酵素反応に関与しています。生命の維持・細胞の成長・分化・増殖に深く関与している。

体内に取り込まれた後のビタミンAの運搬と移動に亜鉛が必要です。そのため亜鉛欠乏があってもビタミンAが体内で作用しずらくなります。

つまり亜鉛とビタミンAはセットで摂取するのが効果的です。

④ビタミンB群不足 皮膚や粘膜はビタミンB群不足の影響を受けやすい組織です。

ビタミンB2→口角口唇炎・脂漏性湿疹・舌炎・角膜血管新生

ビタミンB6→脂漏性湿疹・ペラグラ様皮膚炎・(ビタミンB2欠乏に類似)

ナイアシン→ペラグラ

ビタミンB12→ハンター舌炎、色素沈着

葉酸→色素沈着、口唇炎(ビタミンB12欠乏に類似)

*ペラグラとは ナイアシン欠乏。皮膚炎・下痢・認知症などの症状がある。

 

やはり症状の根本原因をさがすうえで血液検査というのは必要不可欠になるでしょう。全身疾患が一般の内科で見つからない場合は一度分子栄養学に基づく血液検査を受けてみることをお勧めします。またたとえ全身疾患があったとしても栄養療法と併用することで、十分症状の緩和につながるケースもあります。