有機酸検査(OAT)の検査からわかること

今日はバイオロジカル検査の一つの有機酸検査について少し詳しく書いてみたいと思います。非常に簡便な検査でありながら得られる情報は多岐にわたり大変有用な検査ですが、まだまだ認知度が低い検査です。

そもそもこの検査から何がわかるかがわからないと、「検査を受けてみよう。」という気にはならないのは当然だと思います。また実際、血液検査などに比べ料金も高額ですので、ある程度患者様本人がこの検査に対しての理解度や得られる情報について知っておく必要があります。

この検査は赤ちゃんからお年寄りまで何の侵襲性もなく、朝一番の濃い尿を検体としてだしてもらうという、実に簡便な検査になります

尿というものは何か?まず考えてみましょう。

身体を構成する細胞ではタンパク質を作り、エネルギーを産生します。細胞はそのために酸素やお水、栄養素が必要です。そして必ずそれらは代謝され、栄養素は分解されゴミがでてきます。ここでいうゴミは水と二酸化炭素。そしていくつかの代謝産物(例 モノを燃やした場合、灰にあたります。)ができます。これらの燃えカスを回収し体外に排出する仕組みが体には備わっていますが、そのなかで揮発性の二酸化炭素は肺で呼吸によって体外に排出されます。そして不揮発性のゴミの代謝産物は尿から排出されます

タンパク質を体内で燃やすと、アミノ酸の窒素からアンモニアがつくられます。アンモニアは肝臓で尿素に作り替えられます。腎臓ではゴミの分別を行い必要なものは体内に残し、不必要なものを身体の外に出すということを行っており、そうして尿として排出されるわけです。

そのため腎不全などの方は腎臓の働きが落ち血液のろ過が十分に行えず水分や老廃物のゴミの処理がうまくいかなくなってしまいます。そのため人工的に血液の浄化を行っているのが透析療法なんですね。

そしてこの有機酸検査ではこのような尿中の代謝産物を測定し、また同時に真菌やクロストリジウム菌などがだすゴミ(代謝産物)も測定することによって、慢性疾患の根本原因をより詳細に知ることができる有用な検査なのです。

人間の体内では上記の説明のようにゴミ(代謝産物)を出しますが、真菌(イースト菌)やクロストリジウム菌といった菌が異常増殖することによってそれらがだす特異的なゴミ(代謝産物)を測定することにより、体内における真菌やクロストリジム菌などの増殖の程度を予測することができます。

腸内の微生物増殖

イーストと真菌マーカー

酵母菌・真菌の代謝産物が高値の場合、腸内で酵母菌や真菌が増殖していることを表しています。特に酒石酸やアラビノースが顕著に高値を示すことが多く、これらはカンジダ菌が腸粘膜のヒアルロン酸を分解することにより生成されます。

 

クロストリジア菌マーカー

クロストリジア・ディフィシル菌の病原性

主に抗生物質を服用した際に副作用として下痢や軟便を伴うことがありますが、この原因菌の代表とされるものがデフィシル菌です。抗菌薬の投与により腸内フローラが乱れると、多くの抗菌薬に耐性をもつ、ディフィシル菌が増殖し毒素を産生します。

①有機酸検査ではこのクロストリジウム・ディフィシルの量が測定可能です。

②クロストリジウム菌の神経伝達物質代謝産物を変化させる3つの毒性マーカーが測定できます。

③ドーパミン代謝産物のホモバニリン酸(HVA)ノルエピネフリン、エピネフリンの代謝産物であるバニリルマンデル酸(VMA)を測定します。

→クロストリジウム菌はドーパミンのノルエピネフリンへの変換を阻害する毒素を生成しますので、ドーパミン/ノルエピネフリンの不均衡に影響を与える可能性があります。

クロストリジウム菌の毒性代謝産物と関連する疾患は多岐にわたります。

自閉症・広汎性発達障害・強迫性障害・躁うつ病・慢性疲労症候群・関節炎・うつ・パーキンソン病・アルツハイマー病・注意欠陥障害・過敏性腸症候群・食欲不振など

シュウ酸塩代謝産物

シュウ酸値上昇はカンジダ感染が考えられます。シュウ酸はからだに蓄積し、チクチク・チカチカするような症状が現れることがあります。抗真菌療法をする必要があります。

解糖系回路の代謝とミトコンドリアマーカー(クレブス回路代謝物)

この項目を説明する前にエネルギーを生み出す流れをおおまかに知っておく必要があります。食事から摂取したグルコースから解糖系→クエン酸回路→電子伝達系という経路を通り効率よくエネルギーを作り出しています

解糖系:場所 細胞内の細胞質

クエン酸回路・電子伝達系:場所 ミトコンドリア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解糖回路代謝物である乳酸やピルビン酸が上昇しているということは解糖系の後のミトコンドリアの機能が低下していたり、またミトコンドリアは酸素を必要としているため貧血の状態ではうまくミトコンドリアは働きません。その他ビタミンB群欠乏や激しい運動・ショック・消化器系バクテリア増殖などによっても上昇します

ミトコンドリアマーカー・クレブス回路代謝産物では下記の図のサイクルのどこかに障害があるとこの円滑な流れが滞り、エネルギーを効率よく作り出すことができなくなります。どこの項目が上昇しているかによって、

・水銀などの重金属の影響を受けているのか?

・ビタミンやミネラルが不足しているのか?

・甲状腺機能が低下しているのか?

・腸内環境が悪いのか?などなど原因を突き止めることができます。

神経伝達物質代謝 トリプトファン代謝物

神経伝達物質のもとになるトリプトファンを摂取したとき

→①セロトニン経路

→②キヌレニン経路(神経毒素 キヌレン酸・キノリン酸が代謝経路中に存在する)に分かれます。

トリプトファンをとったところで、体の中に炎症やまたプラスチック製品など軟らかくするためのフタル酸の暴露、ビタミンB6不足、ストレスによる過剰なコルチゾールは②キヌレニン経路へ反応が進み、神経毒素のキヌレン酸やキノリン酸が上昇してきます。

身体の慢性炎症(歯周病や慢性上咽頭炎・腸の炎症・脂肪肝・ピロリ菌などなど)を減少させる前に過剰なトリプトファンサプリメントや過剰な肉食はかえってメンタル症状を悪化させる恐れがあります。

ピリミジン代謝・葉酸代謝

ウラシルとは核酸を構成している塩基の一つです。ウラシルとチミンの違いはメチル基がくっついているか、いないかの違いです。

つまりウラシルの上昇、になっている場合、メチレーションが回っていないことを表しています。メチレーションについては説明が長くなりますので、また別の機会に説明します。)メチレーションが上手く回らない理由はいくつかありますが、葉酸欠乏かもしくは葉酸代謝がうまくいってないことを表しています。特に自閉症のお子さんでは低メチレーションが多い特徴があります。

ケトンと脂肪酸酸化

エチルマロン・メチルコハク酸・アジピン酸・スベリン酸は脂肪を代謝しうまくエネルギーとして体で使えてないときに上昇する傾向があります。カルニチンが不足していたり、また脂肪を消化吸収する手助けになる胆汁の分泌が上手くいっていないなど。このように脂肪の代謝がうまくいってない方は過度な糖質制限やファスティングはかえって体調をそこねる危険性があります。また脂肪代謝が上手くいかない場合低血糖や傾眠症にも関与していることがあります。

ココナッツオイル・MCTオイルなどの中鎖脂肪酸はすぐにエネルギーとして使えるので脂肪代謝がうまくいってない方にはお勧めです。

栄養素マーカー

各種ビタミンB群などの栄養素の過不足がわかります。

解毒の指標物質

ピログルタミン酸はグルタチオンの代謝産物です。グルタチオンは抗酸化物質や解毒に非常に重要です。グルタチオン欠乏は慢性炎症・抗生物質・酸化ストレスや化学物質の暴露などが考えられます。

オロチン酸の上昇はアンモニア毒素に最も関与しています。肝疾患や消化器出血・便秘・細菌感染などが考えられます。

ミネラル代謝物

リンはリン酸が多く含まれる加工品や食品添加物の摂取が多い時に上昇してきます。過度のリン酸は副甲状腺機能亢進やビタミンD欠乏によるクル病などを引き起こします。

有機酸検査はおおまかにこのようなことがわかりますが、もっと深読みしていくこともできます。尿検査でありながら腸内環境の状態を反映している検査なのです。これらの代謝物を総合的に判断して、根本原因の究明や改善法を導くうえでとても有用な検査になります。特に自閉症や発達障害のお子様などは特異的な検査結果がでる傾向性があります。不調が長引いている方は血液検査に合わせて受けてみる価値が多い検査の一つになります。

 

 

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