妊娠初期の栄養と発達障害

妊娠中の栄養がどのように生まれてくる子供たちに影響を与えるか考えたことはあるでしょうか?

近年発達障害と診断される子供達やまた普通学級には通ってはいるけれども、なんとなく落ち着きがない、集中力がない、協調性がない、お友達と上手くコミュニケーションが取れないなど、なんとなく発達がグレーゾーンの子ども達が増えていると耳にします。

発達障害のことを考える上で、妊娠中の栄養不足が胎児に与える影響について考える必要があります。まず最初に理解するべきことは「エピジェネティクス」という言葉を知る必要があります。

「エピ(epi)]とはギリシャ語で「~の上に」
「ジェネティクス」が遺伝子
「エピジェネティクス」は直訳すると「遺伝学の上にあるもの」というような意味になります。

つまり「エピジェネティクス」という言葉は遺伝子とその他の要因、つまり環境やストレス、食事、生活習慣など後天的な要素が遺伝子情報に大きく影響を与える可能性があり、その仕組みを総称して「エピジェネティクス」と呼びます。

一番わかりやすい例はやはり一卵性双生児のことを思い浮かべてもらうとわかりやすいと思います。

一卵性双生児は全て同じ遺伝子ですが、歳をとるにつれ見た目や病気の発症さらには寿命に違いが出てきます。つまり遺伝子だけではない後天的な要素が大きく関わっているということです。

ゲノム(遺伝子情報全体)を辞書に例えるなら、辞書のどこを読み取るか、読み取らないか。つまり辞書に付箋を貼ること。付箋を外すこと。これを「遺伝子の発現や抑制」と言い換えることが出来ます。この遺伝子の読み取りに後天的な要素が大きく関わっています。

元々は1つの受精卵から細胞分裂を繰り返すうちに約40週かけてヒトが誕生します。身体づくりの工程でどの時期に、どの細胞が、どう分化して組織や器官を作るのかおおまかに決められています。この発生過程の中で特に外界の影響を受けやすい時期を「臨界期」と呼びますが、ヒトではおおまかに妊娠初期12週頃までと言われています。このまだ妊娠が判明するかしないかという時期が特に大事な時期で、この時期の妊婦さんのアンバランスな食事による栄養不足やアルコール、タバコ、薬、レントゲンなどが生育中の胎児に重大な影響を及ぼす可能性が高いと言われています。この時期になにか問題が発生すると、胎児の存続が難しい場合もありますし、また病気になりやすい「素因」をもつ可能性もあるのです。

上記で述べた遺伝子の発現・抑制に大きく関わっているのがメチル基(CH3)です。

このメチル基がDNAにくっつくと「遺伝子のスイッチオフ・発現抑制」の印付けになり、要は「遺伝子の使い方」に関与しています。

この仕組みをDNAのメチル化といいます。このメチル化が上手くいくか、いかないかは栄養素や環境の影響を大きく受けています。つまり妊娠中、特に妊娠初期はこのDNAのメチル化が大きく関与し、近年では妊婦さんの栄養不足が胎児の遺伝子の発現に大きく関与していると考えられています。

妊娠初期にこのDNAのメチル化が上手くいかないことが発達障害に関係している一因と考えられています。また発達障害のお子様は様々な代謝経路に不可欠な酵素の機能に問題があることが多く、酵素の機能を低下させてしまったり、逆により活発にしすぎてしまうことがあります。

そもそも酵素とは体内である物質を違う物質に変換することを促進する物質のことを言います。酵素の機能低下があるということはある物質からある物質への変換が上手くいかないことを表しています。

この酵素の遺伝子は両親から受け継ぎ、お父さん、お母さんの遺伝子の影響を受けます。遺伝子の突然変異がなく正常な場合。遺伝子の変異が1つのある場合(ヘテロ)。遺伝子の変異が2つある場合(ホモ)。に分けられます。遺伝子の変異の数が多いほど酵素の働きに異常が出る確率が高くなります。

★下記の図は葉酸回路(メチル基を作り出す回路)

DNAのメチル化(遺伝情報スイッチオフ)はメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR酵素)という酵素によって代謝が促進されます。ところがこの酵素に遺伝子変異があると酵素が上手く働かず、その結果遺伝子の発現を抑制したい場所のスイッチをオフにできないということ。また肝心の体内のメチル基の不足も起こります。その結果、機能が不完全な細胞が増えることで脳や全身に悪影響を及ぼします。

★下記はメチレーション回路といわれる代謝経路のイメージの一部です。

 

 

妊娠を希望する女性や妊娠中の女性が葉酸サプリメントが推奨されている理由は上の図の葉酸回路といわれる代謝経路をスムーズに回しDNAの合成をスムーズに行わせ二分脊椎症の予防のために近年推奨されています。

しかしこの葉酸経路の中のMTHFR酵素が上手く働いていない方は、DNAの合成は上手くいき、二分脊椎症が予防できたとしても、次の段階への代謝が上手くいかないケースがあります。その結果出産まではたどり着いたけれども、言語や解毒にトラブルをもつお子様が生まれてきてしまうリスクがあるわけです。このようなMTHFR酵素の働きが悪い方は普通の葉酸よりも活性葉酸と呼ばれるメチル葉酸を摂る必要があります。ご自分がどちらのタイプの葉酸を摂るべきかわからないという方は一度MTHFRの遺伝子検査をするといいかもしれません。

メチレーション回路が上手く回っていない可能性がある特に注意すべき人は

①自閉症の方は基本的にメチレーション回路が上手く回っていません。家系に自閉症の方がいる方はやはり遺伝子の影響は大きくあるので注意は必要です。

②低メチレーションの傾向がある人

優秀な両親(エリート家系)から生まれた・強迫神経の傾向・こだわりが強い・完璧主義・競争心が強い・性欲が強い・花粉症がある。これらは低メチレーションと呼ばれる上の図の代謝経路が上手く回ってない方に多く見られます。

発達障害の子どもはMTHFR酵素だけではなくその他の酵素も活性が上昇しすぎたり、低下しすぎることがあります。その結果、有害物質の解毒代謝やホルモンや神経伝達物質の活性や抑制の代謝経路は歯車のように連動して動いていますからどこかの歯車が石のようなものがひっかかり上手くいかないとその他の代謝経路にも影響を及ぼします。

重金属などの解毒・抗酸化物質の産生・消化機能・免疫機能・神経伝達物質の代謝機能・腸の状態・微生物のバランス など

妊婦さんは妊娠前より葉酸(MTHFR遺伝子の働きが悪い人はメチル葉酸)の摂取を心掛け、また自閉症のリスクがある可能性が高い場合には生後も十分な抗酸化対策や腸内環境改善ケア、小麦や乳製品の摂取などに注意を払うことが必要です。

 

まただからといって葉酸を過剰にとることも「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」で、なにごとも適量があります。葉酸過剰摂取においては喘息やアトピー性皮膚炎の発症を高めるのではないか?また父親の葉酸やビタミンB12の過剰摂取は子供の記憶力の低下を引き起こすのではないか?といった研究がなされており、未だ全貌は明らかにはなっておりません。葉酸やビタミンB12は水溶性ビタミンだから多い場合は尿に排泄される方大丈夫と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、DNAのメチル化に関わっており、やはり自己判断でのサプリメントとしての葉酸過剰摂取はやはり気をつける必要があります。

食事からは葉物野菜や海苔などにも葉酸は多く含まれ、やはり日々の食事を妊娠前から気を付ける必要があります。食事からの自然な形の葉酸塩が過剰になるということはあまりないと思います。葉酸についてはアルコールを常飲する方も不足しやすい栄養素です。

血液検査からは赤血球の大きさを知ることができるMCVの項目から葉酸・ビタミンB12不足などをあらかじめ推測することができますMVCについてはこちらのブログをご覧ください。またピル服用者もこれらの栄養素の吸収阻害を受けますので妊娠前には注意が必要です。

また葉酸サプリメントのみならず、規則正しい生活や糖質だけに偏らずタンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルなどバランスのよい食事が必要不可欠なのです。これから妊娠の可能性がある方は自分のトータル的な栄養状態を知りあらかじ栄養状態をよくすることが、心身ともに健康な赤ちゃんを授かることに繋がるでしょう。

 

 

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