子どもの味覚と味覚障害

栄養療法を始める以前に「口腔の健康」はなくてはならない第一条件です。それは歯や歯肉、歯槽骨の健康はもちろん消化管の入り口である口腔内フローラがよくなければ話になりません。しかしそれだけではなく舌や口腔内の軟組織の健康状態も健全な食事をするためには必須条件です。

例えば口腔内に口内炎1つできただけで普段の食事が思うように取れなくなり、食事の制限が出てくるのは皆様も一度は経験があると思います。また乳幼児がよくかかる手足口病のような口の中に水疱ができるようなウイルス性の疾患も、お母さんにとっては食事をとって免疫力を高めてほしいのにお子様は痛がって思うように食べてくれなくないということが生じてきます。

このような軟組織のトラブルは誰もが気づくトラブルの一つだと思いますが、実は舌に起こる味覚障害というのは虫歯や歯周病や口内炎などと違い本人自身が認識がないまま進行しているケースがあります。よく話を聞いてみてはじめて、そういえば最近何か「しょっぱく感じる。苦く感じる。味が感じずらい。」といったことに気づくケースが多いと思います。特に子供の場合はそのような訴えなく味覚障害が起きてるケースは潜在的には沢山あると思います。

なにか偏食が多かったり、または特に発達障害のお子さんでは感覚過敏があってザラザラするものやヌルヌルするものなどを必要以上に嫌うケースもあると思います。子供の偏食はお母さんをも最終的に困らせる大問題です。

今日はこどもの味覚の発達から味覚障害について書いてみたいと思います。

味覚はどこで感じどのような時期から発達しているのでしょうか?

味覚は舌の粘膜にある味蕾(みらい)よばれる受容器の中にある味細胞で感じます。唾液によって溶かされた化学物質が味蕾に到達し味覚細胞を興奮させます。味覚細胞に伝わった信号は舌の場所によって舌咽神経や舌神経などを伝わって脳へ伝わり酸味・甘味・塩味・苦み・うまみなどの味を感じさせます。(味蕾は実は舌の粘膜だけでなく軟口蓋や頬の内側にも分布しています。)

 

一方嗅覚は鼻で感じるものですが、においを感じる嗅細胞は鼻腔の天井にたくさんの小さな隙間が存在し、そこから伸びた神経が脳の神経細胞へ伝えます。味覚の受容体(酸味・甘味・塩味・苦み・うまみ)わずか5つと異なり、嗅覚の受容体はラットの場合でも1000種類以上あることがわかっています。

じつは味覚は嗅覚と深く関係があります。

料理する時でも香りづけにハーブをつかったり、レモンを使うことによって味がぐっと引き立つということがありますね。逆に風邪をひいたときなどは、食事をしても美味しく感じなかったり、味を感じずらいということもあります。これは熱などによって味覚そのものが鈍ってしまうということもありますが、鼻がつまると香りを感じることができなくなるからでもあります。

それゆえ食品にはあえて添加物として香料というものが入っているのもよくみかけるかもしれません。

いままで味覚と嗅覚について書きましたが、ということは常に鼻が詰まっているような副鼻腔炎や口呼吸をしていて鼻腔の通りが悪いこと自体が味覚への影響を及ぼしてしまいます。

近年昔より虫歯のある子どもは減っていますが、逆に歯並びの悪い子供が増えています。顎骨の成長が悪く口腔内のスペースが小さいまま発育すると舌が舌根におち気道を閉塞しやすくなり結果的に口呼吸をしてしまうなどといったケースもあると思います。顎骨の発育が悪い理由はさまざまな原因が絡み合って起きていると考えられますが、その理由に子供が野原を駆け回る時間が減るなどの生活スタイルの変化や、やはり妊娠時期や幼少期の栄養不足も絡み合っているのは間違いないと思います。

おしゃぶりについては賛否両論あると思いますが、鼻呼吸をうながすためのおしゃぶりの使用というのは大事なことだと考えています。これは口腔科医の西原克成先生は相当昔から訴えてきたことの一つです。

味覚の発達

味蕾は胎生11週にすでに形成されているといわれています。「羊水中に甘味物質のサッカリンを注入したところヒト胎児の羊水の嚥下回数が増えたと」いう報告があり、逆に「味の悪いリピオドールの羊水中に注入したところ嚥下回数が減った」という報告があります。また「新生児期にそれぞれの味と表情を分析する実験では明らかに甘味に対して他の味の表情と比べて容易に区別がつく表情」との報告もあります。

また母乳の味は母親が食べたものに影響されるというのは一般的に周知のことだと思いますが、実は羊水にも移るという報告があります。

「妊娠中の母親にニンニクのエッセンシャルオイルを含んで摂取してもらったところ、含んでいないカプセルを摂取した母親と比べて羊水がよりニンニク臭い」という報告もあります。

また「妊娠後期の3週間か授乳期の最初の2か月間のどちらかの時期に母親にニンジンジュースを飲むようにすすめ、離乳期の乳児が初めて野菜を食する時の反応では、母親がニンジンジュースを飲んでいた乳児は離乳食にニンジンジュースのシリアルが与えられると水のシリアルに比べ拒否反応がなく少し食べたが、母親が水を飲んでいた乳児はどちらのシリアルにも選好性を示すことがなかった」という報告もあります。

つまり羊水や母乳に含まれる風味の記憶を長期に保持し、その風味を乳児を好んで好むようになることを意味しています。母乳で育った乳児は母親の食べる食料の風味を母乳を通して経験するため、粉ミルクのみで育った乳児と比べて好き嫌いがおきにくいことも予想されます。逆に母親が妊娠中ジュースなど糖質ばかりを摂取したり偏った食生活をしていればこの結果から推測するに、赤ちゃんはご飯を食べはじめる前から偏食の傾向がついてるかもしれません。

味覚障害を引き起こす原因とは?

味覚を正常に働かせるミネラルとして亜鉛は有名ですが、亜鉛だけをたせばいいというものではないと思います。私が口腔外科の研修医時代、味覚障害を訴える患者さんが来院してましたが、血液検査をしても異常なし。原因不明。経過観察。というケースが多くありました。口腔内はかなり細胞の入れ替わりが激しい器官ですので、栄養不足が出現しやすい器官であり、また栄養を補うことによって回復しやすい器官でもあります。

先日勉強した添加物セミナーでは無害とされてるリン酸塩の摂取が必要な必須ミネラル、微量ミネラルと結合し体の外へ排泄してしまうということでした。リン酸塩はかなり多くのものに添加されていますし、また日本では食品の表示義務が欧米と違い厳しくないので、はっきり表示がなくても知らずに口にしてしまってるということが多くあります。つまり知らず知らずに亜鉛だけではなくミネラル不足になっているということです。

また成長ホルモンが盛んに出ている思春期までの子供たちは成長ホルモンの影響でリンの排泄が抑制されています。大人にくらべ血清のリンの基準値は高値です。その子供たちがファーストフードやコンビニなどの食品添加物の多い食品を食べ続けると長期的にみるとやはり影響がでてくるのは当然のことだと思います。

また薬剤で皮膚科で使うビタミンDや骨粗鬆症の治療薬のビタミンDの内服薬は知らずに高リン血症を引き起こしているケースがあります。

高リン血症が続くと低カルシウム血症を引き起こしテタニーやしびれなどの臨床症状が起こってきます。リンが血中に過剰にあることによってミネラルのアンバランスを引き起こします。

またここでも腸の状態が関わってきますが、ミネラルの吸収は胃酸の分泌と腸内環境に密接に関わっています。味覚障害を起こしている患者さんの多くが下痢をしていたり、便秘をしていたりと腸内環境が酸性に保たれていないようなケースの方が多くいます。特に下痢の場合、血液データをみているとあっという間に、低栄養が進んでいます。当然ミネラル不足は起こるので、まずは腸内環境の改善からのアプローチになるわけです。

味覚破壊を起こす食品添加物

1.化学調味料(グルタミン酸ナトリウム)

2.酵母エキス

3. たんぱく加水分解物

1の化学調味料は食品添加物として取り扱いされていますが、2.3の酵母エキスやたんぱく分解酵素は食品であって食品添加物のあつかいではありません。1、原材料 アミノ酸と記載されていることが多いですが、2.3がはいっていても食品扱いなので化学調味料無添加と表示できるわけです。

これらは非常にうまみが強いためこれになれると濃い味付けでなければ満足できなくなります。その結果本来のかつお節やこんぶ、ほししいたけなどの日本に長きにわたる伝わるお出汁の味では物足りなく感じ本来の味覚が破壊されてしまいます。

口の中に入れた瞬間「美味しい」と感じるものは、おおよそこのようなもので脳神経を過剰に興奮させています。ですので自閉症をはじめとした発達障害のお子さんはこのような食品添加物を特になるべく避ける必要があるのです。本来の「旨味」はしっかりととった出汁のように口に含んだ後ゆるやかに感じるものなのです。

近年食品添加物を全く避けるというのは至難の業だと思いますが意識的に、にぼしやかつお節、あおさやナッツ、ごまなど、またミネラルを多く含む調味料のお塩やお砂糖、にがりなどを意識的に取り入れお精製されたお塩や砂糖は極力さけ、水煮やレトルト、冷凍食品ではなく食材から自炊してもらうだけでも、毎日の500円貯金のように長期的にみれば変わってくると思います。

特に離乳食のレトルトはミネラルの観点からみると赤ちゃんの栄養を考えるうえで不安が残ります。離乳食は火を通すことが必須ですが長時間ゆでたものの煮汁にミネラルが溶け出ていますので、スープごと食べられる工夫や蒸し料理が適していると思います。

またミネラルに関してはなかなか血液検査でも検査値が基準値を超えないことが多く異常が発見されません。特に亜鉛やリンなどといった項目は測られていないことが多いと思います。

当院では分子栄養医学をもとに他項目にわたる血液検査や毛髪ミネラル検査なども行っておりますので、一度気になる方はぜひ検査をしてみるといいと思います。こどもの偏食が実はミネラル不足が原因で味覚障害が起きてるケースがあります。

また子供の偏食については、当然母乳の甘味が乳幼児は好きなわけで、野菜に含まれる苦みや酸味は乳幼児は好みません。苦みや酸味を警戒するようにできているのです。お母さんの心がけとしては、嫌いであってもまずは一口食べてもらう、もしくは最初は吐き出してもいいので乳幼児にいろんな味を体験してもらうのが重要です。人間の味覚は幼少期に決まってしまい、その後あまり発達しないとも言われていますので、嫌いだから。食べないからといってそのままにしておくと、そのお子さんの味覚はより発達することはなくなってしまうのです。

また自閉症のような発達障害があるお子さんは特に感覚過敏やこだわりが強くお母さん一苦労しているかもしれませんが、まずはミネラルを補給してみる。添加物を避けるといったところから始めていただければと思います。

「今なぜ発達行動学なのか」「解剖生理を面白く学ぶ」参照