栄養不足によって起きる舌のトラブル

<舌痛症・味覚障害・口腔乾燥症・舌炎など>

舌は全身の健康状態をみる一つの手がかりとして大変貴重な材料になります。
私が大学病院の口腔外科で研修医をしていた頃、実に多くの舌に異常、違和感、味覚障害などを抱えた患者さんが多く来院されました。
視診や触診などで異常がない場合、多くのケースが心因的なことだと片付けられてしまったケースも多く見受けられました。

東洋医学でも舌診を重要視しているように、分子整合栄養医学の観点から血液データを解析し症状と照らし合わせることで、根本原因を見つけ出せる場合があります。

ここでは特に栄養欠乏(タンパク質・ビタミン・ミネラル)や全身の状態が舌に現れるケースをご紹介します。

<鉄欠乏性貧血>(Plummer-Vinson プランマー・ビンソン症候群)

鉄欠乏性貧血により食道粘膜の萎縮や口角・口内炎・舌炎を見る疾患→鉄は粘膜代謝に不可欠

鉄分が不足すると血液中に含まれるヘモグロビン量・貯蔵鉄が減少し体全体への酸素供給が滞っていきます。これにより動機・息切れ・めまい・ふらつき・全身倦怠感などの症状をおこします。

(症状)
口腔内所見 
舌炎・嚥下困難(飲み込みずらさ)・食道粘膜萎縮・口内炎・口角炎・匙状舌
赤い平らな舌を呈し灼熱感・疼痛・ピリピリ感

その他の症状
小球性低色素性貧血・スプーンネイル(爪のトラブル)・皮膚、粘膜蒼白など鉄欠乏性貧血に現れる症状に準ずる

粘膜の萎縮性変化→癌化する場合があります。

(当院での治療)
血液検査に基づき栄養解析の結果、生活習慣・食習慣の改善
鉄剤を中心にビタミン・ミネラル・タンパクなど足りない栄養素を個人の栄養状態に合わせて補給します。

 

 

<ビタミンB12・葉酸欠乏>(ハンター舌炎)

ハンター舌炎はビタミンB12もしくは葉酸欠乏によって悪性貧血が原因で起こります。悪性とついているのは、当時はビタミンB12が発見されておらず、そのため原因不明の疾患で治療法が確立されていなかったためです。
現代ではビタミンB12の発見により、悪性貧血を改善できるようになっています。

<悪性貧血とは>

ビタミンB12欠乏や葉酸欠乏によって起こります。
赤血球が作り出される際、細胞分裂が行われるのですが、ビタミンB12欠乏や葉酸欠乏により赤血球がうまく正常に作られず巨赤芽球というものが骨髄に留まります。赤血球が正常に作られないため血流量が減り、体は酸欠の状態になります。 ビタミンB12は神経細胞の代謝に欠かせない栄養素です。神経伝達に深く関わっているため、不足するとイライラや落ち着かないなどの精神症状や神経症状を起こしやすくなります。またビタミンB12のみが不足しているということは考えられず、葉酸をはじめビタミンB群全般が不足していると考えていいでしょう。そのためビタミンB12のみの補給ではなかなか改善されない場合があります。

(症状)
口腔内所見
悪性貧血により舌炎を起こした場合にハンター舌炎と呼ばれます。舌がピリピリと痺れたり、味覚障害、しみる感じがして痛い、舌が赤く平らな形になることもあり、鉄欠乏性貧血にと類似した症状があらわれることがあります。

味覚障害は食事を困難にするため、さらなる栄養不足・体重減少などを招く恐れがあり、早急に対処することが望ましいです。

その他の症状
ビタミンB12や葉酸は胃粘膜など他の細胞の成長にも関与しているので、萎縮性胃炎や知覚障害が起きる方もいます。

(当院での治療)
血液検査に基づき栄養解析の結果、生活習慣・食習慣の改善
また胃の摘出後、ピロリ菌による感染、アルコール常飲者、ホルモン剤などの薬剤の影響など総合的に判断し、悪性貧血になった原因究明をし、ビタミンB群を中心にビタミン・ミネラル・タンパクなど足りない栄養素を個人の栄養状態に合わせて補給します。

 

<亜鉛欠乏>

味覚障害を起こすことがあります。舌の表面には味を感じる粘膜があり、新陳代謝を繰り返し新しい細胞に変わりますが、この際亜鉛が必要になります。

<味覚障害の自覚症状>

食事時に感じる

  1. 味が薄くなった
  2. 全く味がしない
  3. 甘味だけがわからない
  4. 醤油が苦く感じる・何を食べてもしょっぱい
  5. 何を食べても嫌な味になる
  6. 味が濃く感じる

(症状)
口腔内所見
味覚障害・舌咽症状が起こりやすい、舌の炎症・乾燥によるしびれ感や痛みドライマウス

その他の症状
免疫機能の低下、皮膚疾患(皮膚炎など)、消化器疾患、脱毛症、生殖機能低下などが起こりやすくなります。
その他亜鉛不足による身体に影響を与える症状については、ブログ「亜鉛の重要性」をご覧ください。

(当院での治療)
血液検査に基づき栄養解析の結果、生活習慣・食習慣の改善
場合によっては追加項目で血清亜鉛や毛髪ミネラル検査により亜鉛不足を診断することがあります。亜鉛欠乏を起こしている原因を診断し亜鉛を中心にビタミン・ミネラル・タンパクなど足りない栄養素を個人の栄養状態に合わせて補給します。

 

<地図上舌>
舌の所々に、あたかも地図のような模様ができることからこのような名前がついています。小児や若い女性に多く見られます。
原因については諸説ありますが、低たんぱく、ビタミンB群不足が関係しているとされています。ストレスや心因的ともいわれますが、ストレスや精神的悩みによりビタミンB群は大量に消費されてしまい、結果的にビタミンB群不足に陥ります。全般的栄養不足が疑われます。

(症状)
口腔内所見
最初は舌の一部に円形または楕円形で、中央がうすい赤色、周辺が白色の班ができます。それらが次第に大きくなり、やがて隣り合った班同士が融合して全体として地図のような模様を形作るようになります。この地図の模様は日によって変化するのが特徴で、数週間で消えてしまう場合もありますが、数か月~数年にわたってみられることがあります。

自覚症状はほとんどなく、少ししみることがあります。

(当院での治療)

血液検査に基づき栄養解析の結果またストレスの原因や睡眠不足・偏食などを含め生活習慣・食習慣の改善
ビタミンB群、たんぱく質を中心にビタミン・ミネラル・タンパクなど足りない栄養素をを個人の栄養状態に合わせて補給します。

 

<口腔カンジダ症>

おもにカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)という真菌=カビによって引き起こされる口腔の感染症です。口腔粘膜に痛みが出たり、味覚異常が現れることがあります。急性型と慢性型があります。

免疫力の低いお年寄りや乳幼児、妊婦や抵抗力の弱い人が罹患しやすくなります。
白血病・血液疾患・糖尿病・HIV・悪性腫瘍・結核などの基礎疾患のある人も罹患しやすいです。

(症状)
口腔内所見
口腔粘膜(舌とは限りません)に拭き取るととれる白い苔(白苔)のようなものが現れ、その下に赤い糜爛(ただれ)が認められます。
舌の痛み・味覚障害

(当院での治療)
基礎疾患がないにも関わらず、口腔カンジダ症にかかる場合は全身の免疫力の低下が考えられます。口腔内を清潔にするとともに、血液検査に基づき栄養解析の結果、生活習慣・食習慣の改善
免疫力が低下してしまった原因究明、不足している栄養素(ビタミン・ミネラル・たんぱくなど)を個人に合わせて補給します。